新年を迎え、三が日の祝賀ムードに、成人式の華やぎ、そして受験シーズンの張りつめた空気へと
目まぐるしく移り変わる初春の候ですが、僕はまだ「あけましておめでとうございます」と新年の挨拶を語り始めることもありません。
なぜなら、このブログ内の季節はまだ“秋”だからであり、今日は去年の10月の記憶を掘り起こしながら旅行記を書いていきます。
本来であれば旅した時の鮮明な記憶をすぐに書きとめることで、出来立てホヤホヤの旅行記を提供したいにもかかわらず、
最近は何かと野暮な用事に追い立てられ、全くブログを書く暇もなく。
泣く泣く卒論を書きながら、文章を書きたい欲を満たす毎日でしたが、それで満たされるくらいなら苦労はしない。
多方面で問題が発生するので敢えて日付は言いませんが、10月の終わりに広島へ旅行に行ってきました。
今旅の目的は二つ。
・アニメ「たまゆら」の聖地巡礼をすること
・原付で秋の瀬戸内海を眺めて島ツーリングすること
その旅の思い出を、一日目の朝から書き綴っていきます。
10月××日06:00 福山到着
前日夜中24:00大阪発の夜行バスに乗り、思った以上に乗り心地の悪い4列シートで揺られながら、
一睡もできず、とまでは言わないものの、二睡三睡くらいしかできず広島にやってきました・・・

冷え込んだ空気に包まれた駅のホームで、
部活に行くのでしょうか早朝から白い吐息を漏らし電車を待つ高校生なんかを見ていると、その町の生活感を感じます。
それを旅してきた“よそ者”として傍観する穏やかなひと時が僕は好きです。
福山駅から電車に乗り換え、06:30頃尾道駅で下車。

今回の旅の全容を地図で示しておきますと、

初日は尾道で原付バイクをレンタルし、竹原まで移動。
二日目に竹原から出るフェリーにバイクを乗せ、瀬戸内海の島々を周遊しながら、最後尾道に帰ってくるといった流れです。
基本夜行バスと原付バイクしか使わないので、交通費はかなり抑えられますね。
そして原付バイクのレンタルは朝の9時からなので、早速時間を持て余してしまいました;

旅の初っ端から手持無沙汰というのでは、計画者の威信にかかわるので、
僕は何食わぬ顔で友人とシーサイドロードをそぞろ歩き、とりあえず思考停止で尾道の海沿いの通りにある、お洒落な雰囲気を醸し出した喫茶店に入ってみることにしました。

旅始めの財布には一抹の翳りもないので、僕はむんっとした表情で豪華朝食メニューを注文し、
早朝の喫茶店にて優雅な朝食タイムと洒落込むことにします。

う~んこれは“ばえる”!
フレンチトーストという高カロリーな食べ物にアイスクリームをつける罪深い一品。
甘いあとくちを香り立つコーヒーで流し込めば、もうこのまま動きたくない、9時まで待っていても罰は当たらないんじゃない?
と胸中に潜む悪魔が囁くも、同行の友人に促され、折角なので尾道を歩いて散策することになりました。

尾道の有名な寺社等は最終日に観光する予定なので、今日は何の目的もなく
ただ気の赴くままに路地に入ったり坂を登ったりしていきます。

至る所に狭路と階段が張り巡らされており、まるでそこは迷路のよう。
尾道まちづくりのコンセプトに「尾道水道が紡いだ中世からの箱庭的都市」というのがありますが
本当に“箱庭”という表現がピッタリの密集した町並みで、路地を歩いていると不思議な魅力を感じてしまいます。

早朝なので坂を登っていてもすれ違う人はおらず、
ここの家に人住んでるのか?というくらい、静まり返った路地を進んでいくと

突然猫が現れてしばしこちらを見つめていたと思うと、すぐに振り向き小走りで坂の上へと消えていきます。
つい追いかけていってしまいたくなる。
しかし追いかけずとも、また違う猫が出てきて、尾道に猫が多いというのは本当だったんだと分かりました。


不思議な雰囲気の漂う路地に、猫が歩いていて、時節密集した建物に隙間が現れては海が見えると。

そりゃ映画やドラマのロケ地になるわな。
これだけ恵まれた場所なんだからよっぽどの名作を生み出しているんだろうなぁ。
そうだよなぁ?ソラとウミのアイダさん?

適当に放浪していたらレンタルバイク貸し出しの時間になったので、バイクステーション尾道さんにて
二台の原付バイクをレンタル!

僕自身原付バイクに乗るのは二回目で、以前は長崎の五島列島に行った際にレンタルして島を駆け巡りました。
あの夏の海風を感じながら颯爽と離島を走った思い出は、今も鮮明に心に浮かび上がってくるほど、僕にとって印象的な旅でした。
今回も気持ちの良い原付旅が出来ると良いな。

まずは尾道をスタートした後、30分程走って、本日宿泊予定の三原にあるホテルで荷物を預け、
その後近くの聖地を巡礼、ひたすら海沿いの呉線を走って竹原に行くという行程になります。

本当は竹原に宿泊したかったのですが、年に一度のイベント“憧憬の道”の日に敢えて行くので、
近くの宿がとれませんでしたorz
くそぅ日曜日なのに宿の空きが無いって、この世の中は仕事のないニートで溢れかえっているんじゃないか?
そんな愚痴を今更こぼしても仕方がなく、とりあえず荷物をホテルに預け、三原にある竜王山展望台までやってきました。


たまゆら~もあぐれっしぶ~第6話、ぽってが死んだ父の後輩とカメラマンの志保美さんとの三人で、
父親がかつて訪れた瀬戸内の各所を辿るお話にて出てきたシーン。


父親が生前影響を与えてきた人の声を聞き、娘であるぽってと出会えたことを喜ぶというハートフルストーリー。
この話を見て僕は泣きました。
たまゆらのストーリーを思い出しながら、目の前の瀬戸内海に浮かぶ島々の風景を眺め、心が浄化されていくようだ。


更には明日あの島々をバイクで駆け巡るんだと思うと、期待で胸が膨らみます。
この時の僕達の心境を表すに、マサラタウンのサトシに負けず劣らぬ、ワクワク感と旅心を募らせていたに違いありません。
さて、展望台でゆったりと風光明媚な景色を眺めた後は、いよいよ今旅一番の目的地と言っても過言ではない
竹原に向かっていきます!
三原から呉線に入り、ひたすら海岸沿いを走る。
ただあまり原付に慣れていないこともあって、道路の脇を走って後ろの車に追い抜かれるのがストレスだったり。
大型トラックに抜かれるときなんてヒヤヒヤして海の景色を十分に楽しめません。
やっぱり島旅で原付は素晴らしいけど、街中はしんどいなぁっていうのが素直な感想。
そんなこんなで呉線を走っていると、忠海駅の看板が見えたので寄り道します。
たまゆら作中にて何度か出てきている駅ですが、一番印象的なのは初めてちひろちゃんが竹原に来る時に
間違って下車してしまったシーンでしょうか。




ちひろちゃんポンコツ可愛い。

さてここまで来たらもう竹原は目前!
再びバイクを走らせ、竹原道の駅にもうすぐ到着、なので。
道の駅の二階にはたまゆらの特設コーナーがあり、そこではパネルや声優のサインが飾ってあったり


オリジナルグッズが販売されていたりします。

1期放送から7年、最後の映画放映から2年以上は経つのに、これだけ作品を持ち上げているというのは
地域とアニメ、そしてファンが密接に結びついているからこそなのでしょう。
たまゆらは根強いファンがついてますし、聖地アニメの成功例として、その素晴らしさを感じられる旅しにしたいところ、なので。
さて、道の駅に長居しても仕方がないので、町並み保存地区の方へ向かっていきますか。

先程も話した通り、今日は年に一度開催される祭り“憧憬の道”の日で、
夜になると竹筒に灯された灯りで町並みがライトアップされ、ここら一帯が幻想的な風景へと様変わりします。
ですのでアニメのファンやその他観光客でごった返していると思いきや

意外と静かで、というか閑散としていて
活気のなさに少し不安になってきましたが
ある店前にだけ長蛇の列が形成されていて、

わちゃわちゃと見た目からして同胞である人混みをかき分け店先へ行くと

やっぱりここだったか、お好み焼き屋ほり川。
たまゆらで幾度となく登場している“ほぼろ”のモデルですね。

それにしても周りの店には目もくれず、このほり川にのみ客が密集している様子を見てると
町全体がアニメのファンを迎え入れてくれてるような空気ではないのかなと疑ってしまいます。
そんなことを言いながら結局僕も浅慮なオタクの一人にすぎないので、ほり川で昼飯をいただくことにしました。


ほぼろ焼きとビール。
味はですね、僕はこのブログにおいて真実しか語らないポリシーを抱いているので敢えて言いますが
特別美味しくはない。
店の回転を上げるために大量に作って切り分けて・・・みたいな大雑把な作りをしているので、普段はもしかしたら美味しいかもしれませんが。
でも今日に限って言えばやはり微妙と評さざるを得ないところ。
広島焼きに対する関西人のプライドがそう感じさせているのか?いや違うはずだ。この気持ちは本物に違いない。
試しに僕達は梯子でもう一軒近くの広島焼きに行く予定を立て、店を後にしました。
表の通りに出て、人通りが増してきたと同時にようやく賑やかになってきた聖地を闊歩しながら
西方寺普明閣に向かいます。
流石にインターバルなしでお好み焼きハシゴするのは厳しいので。
西方寺から竹原の旧市街を見下ろすカットは、たまゆらのキービジュアルにもなっていて、
老若男女みなカメラを構えてその光景を収めています。


実際にはオタクとオタクとオタクしかいませんでしたが;

この寺では、作中の登場キャラが悩みを吐露したり、決意を表明したり、
そんな心情描写が為されるシーンが多かったような気がします。

高校生の女の子が自分の将来と向き合い、多くの選択肢から一つの進路を決めるのに苦悩する、その真剣な有様は
今の自分の心に訴えかけるものがあります。
「僕の就活にハッピーエンドはない。なぜなら働きくないという絶対的な前提のもと、数ある選択肢を消去法的に吟味しているにすぎないからだ」とか言っている自分が恥ずかしくなってきました。

西方寺から竹原の町を一望し、彼女たちは自分の日常を客観的に達観的に眺めて
自分の進んで行く先を考えていたのかもしれません。
実際その場所に立ってそう思いました by将来のニート
さて、ある程度旧市街は散策したので、次は旧日の丸写真館を目指します。
街を縦断する川を新市街側に渡る際、街の何気ない光景になぜか心惹かれてしまう。

そして歩いて数分程度で目的地に辿り着いてしまうあたり、竹原の町のこじんまりとした佇まいを感じてしまうのですが
日の丸写真館も、アニメで見た様相と全く変わらず、そこにぽつんと建っていました。


既に営業されておらず、歴史的文化財として残されているだけなので、
かつての賑わいを失った哀愁漂うオーラが感じられます。
その後再び竹原の旧市街に戻りながら、古い町並みや伝統ある酒蔵を眺め、散策を続行。


そういえば、竹原に来てもう一つ訪れておくべき場所を忘れていました。
多くの聖地巡礼訪問者がそこを訪れながらも、閉店していることばかりの幻の喫茶店で、
夏場の1,2ヶ月もまるまる休業していたことから聖地巡礼者泣かせと呼ばれるその店の名は――
茶房ゆかり

そう、cafeたまゆらのモデルとなったお店です。
「憧憬の路」の日なので、流石に今日は営業している様子!

でも、それにしては暖簾の前に人だかりができておらず、「おいおいオタク諸賢これはどうしたことか」と思いながら
敷居を潜って中に入ると、
荘厳な料亭へと、あるいは由緒ある旅館へと導くような狭路が続いており、

古き良き和の空気を吸いながら、奥へ誘われるように進んでいくと、、、

溢れんばかりのオタクがいました(やっぱり)
愛あるところに神あり、聖地あるところにオタクありです。

店内には、たくさんのアニメのグッズや、聖地巡礼日記などが飾られていて、そこが舞台だという実感を与えてくれます。
店員の方に一声かけると、奥にある階段を上らせてもらうことができ、

作中同様の屋根裏部屋も実在していることも確認。

最重要スポットに訪れることができた安心感からか、どっと疲れを感じて、
休憩にゆったりとコーヒーを頂くことにします。

はぁ癒される。
美味しいコーヒーを啜り、穏やかな昼下がりの時間を過ごす。
薄暗い店内と、漂うコーヒー豆の香り、目の前には何故か相席するコスプレイヤー集団。
コスプレイヤー(男)(制服)(スカート)(キツイ)をなるべく意識の上に顕在化させないようにして、心身の回復を待ちました。
あまり記事には盛り込んでないけど、たまゆらファン本当に変な人多いなぁ・・・^^;
まぁ他人は他人ということで、気を取り直して巡礼を楽しんでいくことにします。



竹原には有名な酒蔵が多く、「竹鶴」や「誠鏡」、「龍勢」などの日本酒が造られています。
特に竹鶴は有名で、ニッカウヰスキーの創業者竹鶴政孝が生まれ育った実家が、この竹鶴酒造。
結局家を継がず、独立してウヰスキーの道に進んだ彼の経緯に興味がある人は、NHKドラマ「マッサン」を見て下さい。
僕は教養より実飲、薀蓄を聞くくらいなら酒を寄こせよという、花より団子人間なので
酒をたずねて三千里、町中を放浪していると
少し開けた広場のような所で、地酒の飲み比べを行っていました。

早速飲み比べセットを購入して試飲してみると、どうやら「誠鏡」という酒が一番美味しいようです。
有名な竹鶴は熱燗で飲むと美味しらしいので、これは家で実践すべしですね。
ということで誠鏡、竹鶴、ついでに幻という酒を纏めて購入し、自宅に配送しました。日本酒最高。
さて、アルコールも入ってそろそろ何か食べたくなってきたところで、
先ほど言っていた広島焼きの食べ比べを行いたいと思います。
食べログ検索を駆けると評価3.5を超える有望店が町の外れにあったので、そこへ向かうことにします。

皆さん、関西のお好み焼きと広島焼き何が違うかご存知ですか。
生地と具材を混ぜてから焼くのがお好み焼き、別々で階層状に焼くのが広島焼き、ということらしいですよ。
それと広島焼きには麺が入ってますね。

注文した広島焼きは、右が「竹原焼き」、左が「広島焼き海鮮ミックス」です。
竹原焼きは酒粕が入っていて独特の香りとチーズが相まって美味。
海鮮ミックスはそれの更に上を行く美味しさで、昼間に食べた広島焼きとは天と地の差って感じがします。
「御幸」というこの店は地元民らしき人で賑わっていて、本当に美味しいので、竹原に来たときはこちらで食べることもオススメします!
夜飯を食べて店の外に出ると、辺りはすっかり真っ暗で、ここからいよいよお祭りの始まりといった感じです。
竹原で毎年一度開催される“憧憬の路”は、竹細工に灯りをともして、町中を照らし出すイベントで
今日はわざわざこの日を選んでやってきました。

町並み保存区に戻ると、多くの人で賑わっていて、真っ暗な町と微かな竹灯りと多くの人波という異様な光景に変わっていました。

竹の合間から漏れ出す光は温かみを帯びていて、それは多分、竹を掘る時に加えられた誰かの努力と想いが伝わるからでしょう。


そうしてやってきた、竹灯りの路はアニメで見た時ほど輝いてはいませんでしたが


僕としては来たかった場所、見たかった光景なので、十分に満足できました。
その後も色々な竹細工を眺め、

騒がしい雰囲気の中、

色んな人が色んな形で携わって、祭りを楽しんでいるのが感じられたので、

もう竹原の町に思い残したことは何一つなく、
和気藹々の空間から一足早く退散し、宿のある三原へと帰りました。

夜行バスによる睡眠不足状態から始まった一日でかなり疲れましたが、
翌日も7時発のバスに乗るという過酷日程を組んでしまっているので、早々に就寝することにします。
とりあえず、ずっと訪れたかったアニメ聖地竹原にくることができて良かったです。それではまた次回!